平成17年第2回港区議会定例会
一般質問
平成17年第2回港区議会定例会にあたり、ネットワークみなと社民の阿部浩子は、区長並びに教育長に質問させていただきます。
第一に区の子育て支援についておたずね致します。
この4月から次世代育成支援対策行動計画が前面施行になりました。港区では、子どもの医療費の助成が中学校卒業まで、通院費・入院費・食事療養費が無料となりました。これは多くの区民の方から喜ばれています。また、出産時には国民健康保険による出産一時金も9割の範囲で貸付が始まりました。
さて、2002年の子ども未来財団の調査によると、子どもを出産する費用が平均45万円だとされていますが、港区に住んでいる方々に聞いたところ、約70万円〜100万円かかったとの声が多いのです。これはご存知の通り、普通分娩には医療保険が適用外のためです。また、定期健診などの出費もかさみます。
現在、国民健康保険加入者で出産育児一時金が35万円、また、会社員が入っている政府管掌の健康保険では、30万円が支給されます。出産費用の一部助成という意味においては助かりますが、貯金がない夫婦においては、子どもの出産もままにはなりません。
また、アンケート調査によると、結婚している夫婦では子どものほしい数は2人、しかしながら理想と現実はかけ離れています。子どもを産みたくても、産んで育てるには費用がかかるためです。
この実態を受けて、厚生労働省では、医療保険が使えない出産費用の保険適用や出産時の一時金の増額を検討することを決めたと報道されています。
また、育児休暇を取得すると、雇用保険から育児休暇給付金が支払われますが、この額は、月収の3割とされ、また復帰後に1割給付される仕組みとなっています。育児休暇の期間は社会保険料は免除になりますが、区民税などは前年の所得によって計算され、納めなければいけないため、給付金をもらっても生活していくのが大変というのが区民の切実な声です。
そのため、妊娠した時に税金の支払いを含めた生活設計をたてておかなければ育児休暇も取り難いこととなってしまいます。
さて、復職するために港区では、育休あけに伴う、保育園の予約制度をはじめていますが、23区では他に3区で実施しています。これは仕事をもつ親にとってはありがたいものです。武井区長は保育園待機児ゼロを目指すと施政方針にも掲げていますが、働く親には子どもが保育園に入ることが絶対条件でありますので、予約制度においても待機児童ゼロへの取り組みをおねがいします。
しかしながら、港区でも4月入園以外は保育園の育児休暇あけの1歳児は満員で公立保育園に入園を希望していても認証保育所、また年度末に近くなってくると認証保育所にも入ることができない1歳児もいます。
育児休暇を終え復職しても、認証保育所にお金がかかり、また、公立保育園では延長保育している園に入園できなかったため、ベビーシッターを頼んだりと、多くの費用がかかることになります。働く親にとり、保育園は就労の必須条件ですが、保育園に入園できないため、民間の保育施設等を利用すると世帯の経済負担は極めて高くなっています。
子育てにかかる費用は、内閣府の外郭団体の調査で1人の場合で月2万6500円で、2人の場合5万800円で、平均で生活費の16.1%を占め「家計にとって子育て費が、かなりの負担となっている。」と報告されていますが、年々低下する出生率の一因ともいわれている現状への対応が求められています。
日本の社会保障給付を欧米諸国と比較すると「高齢」関係給付の比重が重く、「児童・家族」関係給付については、欧州諸国に比べ低く米国と同等の水準です。
国では、5月27日の政府税制調査会の基礎問題小委員会で、子育て支援のために税額控除の創設の具体策を検討するとしています。納税額を直接減らす「税額控除」は子育てをしている世帯には大変ありがたいものです。次世代育成支援は子どもを持つ親だけではなく、地域で子どもを育てようとしていますが、経済的負担を考えると少子化はますます加速していくばかりです。
港区からも東京都や国に税金控除も含め子育て支援にかかわる構造的な環境整備の早期実現をはたらきかけるべきだと考えますがいかがでしょうか。
3月に公表された「女性労働白書」では東京23区など都市部ほど、幼い子どものいる世帯で母親が働いている割合が低いことが示され「仕事と育児の両立が難しいのでは」としてます。
2004年度の合計特殊出生率、つまり一人の女性が生涯に産むとされる子どもの数は過去最低の1.289となることも明らかになりました。都内の出生率は2003年度の確定値で0.997です。
日本の人口は来年度から減少に転じる見込みであることも政府は明らかにしていますが、国を挙げての少子化対策も十分な効果をあげていないという現実を直視すべきです。「少子化社会白書」では、70年代前半に生まれた第二次ベビーブーム世代の女性が30歳代前半の出産期にあたる今後5年間を「少子化の流れを変える好機」と位置付け、またこの間に「出産や子育てにメリットがあると認識できる施策を積極的に展開することが重要」としていますが、区長の認識を伺うものです。
次に昨年の第2回定例会にて、ネットワークみなと社民として、港区に核となる「子ども家庭支援センター」の設置を求め区長に質問しました。いよいよ10月からオープンする予定です。児童相談、虐待の未然防止、早期発見等の役割を担うこととなりますが、半年間は平日の9時〜5時とされています。仕事をしながら子育てをしている方には、このような時間帯の設定では利用することができません。働きながら子育てをしている方々も利用できるよう、今後利用時間の見直しについても検討すべきと考えますがいかがでしょうか。
次に、指定管理者制度導入についておたずね致します。
港区では来年度から指定管理者制度の導入をする予定です。区の基本的考え方では現在、委託している施設から指定管理を導入するとのことです。また、直営方式で運営している施設についても施設の特性を見極めながら、指定管理者制度の導入を推進するとしています。
そして、指定管理者の選定では、政策的な判断により特定団体に管理を行わせる場合は公募をしないとしており、公募をしない施設は20種別46施設あります。
その中でも財団法人スポーツふれあい文化健康財団にこのまま3年間管理を行わせる施設は区民センターをはじめとして、スポーツセンターまで入っています。この政策的な判断のために管理させるというのはどのような理由なのでしょうか。
健康増進センターは、現在、スポーツクラブそして医師会にそれぞれ約3900万円と778万円で委託しています。このキスポート財団には、常勤のスポーツの専門家がいないため、健康増進事業ではスポーツクラブに委託しているのです。
指定管理者制度の区における基本的考え方は、民間事業者が持つノウハウやアイディア、専門性などを公の施設に活用する可能性が広がった結果、コストの削減や多様化する住民ニーズに柔軟に対応できるようになるなど、効率的で効果的な区民サービスの提供につながることが期待されるとしています。
政策的な判断で専門的なノウハウもないキスポート財団を指定管理者とすることで、効率的で専門的な区民サービスの提供になるのでしょうか。
区の基本的な考えによって、財団を3年間も指定管理者とするのではなく、スポーツセンターを始めとする施設は、キスポート財団でなくそれぞれの施設の管理運営に専門性を持つ法人を公募すべきと考えますが、区長の見解はいかがなものなのでしょうか。
次に、導入の可能性を推進する現在直営方式で行っている施設についてお尋ねいたします。
この5月に「平成16年度 包括外部監査の結果報告書」が作成されました。この中では、選定した監査テーマとして、福祉施設の財務管理と運営についてで、福祉会館・港南健康福祉館・敬老館・児童館・保育園・障害保健福祉センターの6施設を対象としています。
このテーマを選定した理由は、「これらの施設は、建設及び維持管理運営に多額の税金が投入されています。施設で提供されているサービスが区民のニーズを的確に反映したものであり、コストに見合う内容である必要があります。区立施設の管理運営については、必ずしも区で直接管理運営をする必要がなく、民間事業者等に任せることが可能となっています。」とされています。
この「結果報告書に添えて提出する意見」として、『保育園の運営方式の検討がされています。「民営化を進めることで、区保育サービス全体の活性化を図り、質を向上させ、利用者からの相談・要望に迅速に対応する土台ができると考えられます」また、行政コストとして、園児一人あたり、区立保育園では、1908千円に対し、私立保育園では、1,257千円で、これは区立においては、私立と比べ職員の平均年齢が高く、職員人件費が高くなっていることが影響しています。保育事業を区直営で行うことは財政面のみをみると負担が大きい結果となっています。』としています。
また、『港区の私立保育園と比べると区立の場合は常勤職員の平均年齢が区立では35.4歳、私立では33.5歳で特に保育士数のピークは、区立が30歳代、私立が20歳台、それが大きな相違点』とされています。
保育園は、0歳〜小学校入学前までの子どもを預かる施設です。特に年齢が低い場合、保育士の経験がとても重要な場所です。話すことができない子どもの顔や表情をみて病気かどうかも判断します。職員の年齢が高いということはベテランの保育士が多い環境であるといえます。この包括外部監査報告書について、監査委員からも「公の施設の管理運営については、経済性・効率性のみにとらわれることなく」と意見がそえられています。
国は、民間にできるところは民間にと規制緩和を続けています。
2004年度には、三位一体改革に基づく補助金1兆円削減の一環として、公立保育所運営費の一般財源化を行いました。全国の保育所約22,000箇所のうち12,000箇所について地方自治体が財政の責任を全て負うことになりました。これを受け、区でも次世代育成支援対策行動計画の中には、「公設民営、民設民営方式の導入」を事業化し、保育事業への民間の活力やノウハウを導入するとしています。
2001年池袋の認可外保育園「ちびっこ園」での4ヶ月児の窒息事故や2002年香川県の認可外保育園「小鳩幼稚園」の園長による1歳2ヶ月児の虐待死など、これらにおいては被害者が赤ちゃんであり、目撃者もいない若しくは証言能力もない乳幼児でありました。2004年に入っても埼玉県で2件、徳島県で1件認可外保育園の死亡事故がおきています。
公立保育所廃止・民営化されたところは、子ども達にとって職員がすべて変わってしまう事へのストレスにより落ち着きがなくなったり情緒不安定になってしまい、とりわけ4・5歳児への影響が大きいといわれています。現在係争中の裁判においても、親の不安や職員の緊張など子ども達に影響を与えるなどどんなに詳細な引継ぎを行ってもそれまでに積み上げてきた保育者と子ども達の信頼関係や保育内容を同じように引き継ぐことはできません。また、親たちにとっても公立保育園の廃止や民営化は行政の不信をうみ、「次は自分のところか」という不安と混乱がおき、実施後は保育者とつくってきた信頼関係を失うなど、行政不信と子育て不安を拡げるものとなっています。
行政が民営化の理由としてあげるのは、コストとニーズがあり、コストは行政の財政難と公立保育所は、包括外部監査の報告書と同様にお金がかかりすぎということに対し、子ども達にはその分負担をしいることです。また、民営化をすれば多様なニーズに対応できるようになるとしています。しかしながら保育園が民営化された他の自治体は違い、港区は決して財政難ではないはずです。むしろ23区でトップの財政力を持っています。子ども達に正当な理由もなく負担をしいる指定管理者制度の導入は絶対反対です。
4月にあったJR福知山線の脱線事故が大きな例です。利益と効率をあげようと人件費カットをし、安全よりも企業の利益を優先した結果の事故といえます。保育園を民間に委託した場合、安い人件費で採用される非常勤や常勤職員が増えてしまいます。
中央区の保育園では、指定管理者の公募条件では園長は35歳以上としています。35歳の園長は港区の公立保育園では何人いるのでしょうか。保育士は経験があることが最低条件です。そして福祉施設は効率よりも安全が第一です。
将来、保育園において指定管理の導入を区として考えていますが、何よりも安全に考えなければいけない保育園を区長は利益を追求する企業に任せるのでしょうか。今後とも公立保育園は直営にすべきと考えますが、「子育てするなら港区で」と宣言して区長の見解をお聞かせください。
また、今回指定管理されない施設として、港南健康福祉館においても、トレーニングセンターなどを民間のスポーツクラブに委託しています。また、厨房においては一度も利用されていません。
大平台みなと荘においても、運営を富士屋ホテルに委託し、予約をJTBに委託しています。このような施設について指定管理者制度の導入の検討が行われたのか、そして条例化における課題はどのように整理されたのか伺います。
さて、公の施設は、地方自治法第244条第1項に「住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するための施設」と定義されており、自治体は「公の施設責任」を負っています。福祉の増進は、施設利用者のみならず、そこで働く人々にとっても図られなければなりません。雇用の安定と継続性を図ることはもちろん、法令が遵守され、公正労働、男女平等参画、障害者雇用などの総合評価方式を指定管理者選定にも導入すべきと思いますが、区長の見解はいかがでしょうか。
最後にに、学校選択希望制について質問いたします。
文部科学省の中央教育審議会の有識者及び関係団体からの意見聴取において、藤田英典国際基督京大学教授は、「学校選択制度を義務教育段階に安易に導入することにより、優秀な生徒を確保できなかった学校の評価は下落し、全ての学校の評価が高まる可能性は低い。保護者が学校に求めるのは「卓越性」と「安全性」であり、学校選択制の支持者が主張する学校の特色性に基づいた学校選択は起こりにくい」と述べています。
港区では学校選択希望制が導入され、3年目になりましたが、この3年間の問題点や課題を洗いなおすべきだと考えます。
今年度も小学校1年生が3クラスまたは12人しか入学しない学校とこの差は顕著になりました。教育長は、学校の統合と廃止ではなく、地域と学校と一緒になって児童・生徒を増やしていきたいとしています。これは適正配置を心配している区民の方を勇気付け安心させる発言です。
小学校の新入生がいないのは、地域や学校だけの責任といえるのでしょうか。幼稚園がなくなり、幼稚園がある小学校へ通うなど、児童館がそばにあるから学童のある学校へなど、放課後育成事業のある学校など保護者の希望は近くにある学校ではなく、制度や施設が整っている学校を選択するなどの声が大きいです。児童館も近くにない、また放課後育成事業もまだする予定がないなど、格差が広がるばかりです。
学校の放課後については、学童保育においては保険福祉部、放課後児童育成事業については教育委員会とそれぞれ所管が違うのも問題があると考えられます。学校選択制の導入により適正配置について考えるなら、それぞれのサービスの展開についても注視すべきです。
次世代育成支援行動計画でも大型児童館の中高生プラザを5館にするとしていますが、現在、児童館がない空白地域を早急に計画すべきです。地域や学校に任せるのではなく、港区の教育委員会として子育て推進課とも連携をとり、偏りのない学校の選択ができるように努力すべきだと考えますが、教育長の見解をお聞かせください。
《区長答弁》
ただいまのネットワークみなと社民の阿部浩子議員のご質問に順次お答え致します。
最初に、子育て支援についてのお尋ねです。
まず、子育て支援にかかわる環境整備についてです。
国及び東京都に対する、税額控除も含めた子育て環境の整備への要望について、具体的な課題を検討してまいります。
子育てしやすい環境をつくるためには、国、地方自治体、企業等が一体となって、次世代育成支援に取り組む必要があります。
ご指摘の件について、国は昨年度、「子ども・子育て応援プラン」を策定し、その中で、税制のあり方について検討するとしています。
今後も、国及び東京都に対し、子育て支援策の充実に向けて要望してまいります。
次に、少子化対策についてのお尋ねです。
少子化傾向が進む中、私は、子育て・子育ちに関する総合的な支援策を、本年度の予算編成において区の最重要課題と位置付け、積極的に取り組んでおります。
区は、今後の5年間に、集中的に少子化対策に取り組むため「港区次世代育成支援対策行動計画」を策定し、子ども医療費助成制度の拡大など、様々な施策を推進しております。
今後も、この行動計画に基づき、すべての家庭が安心して子どもを産み育てられる子育て環境を目指して、地域等と連携し、少子化対策に力を注いでまいります。
次に、子ども家庭支援センターについてのお尋ねです。
児童虐待をはじめ、子どもと家庭に関するあらゆる問題に取り組むため、先駆型子ども家庭支援センターを、本年10月に開設する予定です。
本年度の子ども家庭支援センターの開館時間につきましては、平日の午前9時から午後5時までを予定していますが、開設後の利用状況や区民要望を踏まえ、今後、柔軟な対応ができるよう検討してまいります。
次に、指定管理者制度導入についてのお尋ねです。
まず、キスポート財団についてです。
港区スポーツふれあい文化健康財団は、多様化する区民ニーズに柔軟かつ、的確に応えるため設立され、区民サービスの向上に寄与してきました。こうした設立趣旨やこれまで担ってきた役割を踏まえ、平成20年度までの3年間に、今後のあり方を検討する必要があると考えております。
このため、当面の措置として、港区スポーツふれあい健康財団を特命により、指定管理者とするべきであると判断しております。
次に、公立保育園への導入についてのお尋ねです。
公立保育園への指定管理者制度導入については、今後の保育需要、あるいは保育サービスに対する要望等を踏まえて検討いたします。
検討に際しては、保育の質の維持・向上、子どもや保護者の利益を優先する視点を持ち、単に「効率化、経費削減」を目的としたものにしてはならないと考えております。
次に、港南健康福祉館と大平台みなと荘への導入についてのお尋ねです。
区は、あらゆる公の施設について、指定管理者制度導入を検討してまいりました。
ご指摘の港南健康福祉館については、健康ゾーン等の業務を委託しておりますが、今後の福祉会館のあり方を検討する中で、事業内容及び施設活用方法を見直すこととしております。また、大平台みなと荘については、施設の現況調査を実施し、今後の方向性を定めることとしていおります。
こうしたことから、両施設ともに、管理上の課題整理が必要であるため、今後も引き続き検討してまいります。
次に、指定管理者選定についてのお尋ねです。
指定管理者の選定は、条例や規則で規定する選定の基準に基づき、適切に実施してまいります。
選定にあたりましては、区民サービスの向上につながる施設運営を実現するため、事業者の経営状況や実績、関係法令の遵守の状況、男女平等参画、障害者雇用等の取り組み姿勢など、様々な視点から事業者の能力や適性を極めてまいります。よろしくご理解のほどお願いいたします。
学校選択希望制についてのお尋ねです。
学校選択希望制は、「特色ある学校づくり」「開かれた学校づくり」を推進するため平成15年度に導入しました。今後、導入後3年間の実績やアンケートの結果などを踏まえ、学校選択希望制の検証を行う予定です。
ご指摘の放課後児童育成事業については、学校施設の活用条件や地域での現状を考慮しながら順次実施し、区長部局とも連携して、子どもたちが安心して放課後に活動できる場所づくりに努めてまいります。